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~2種類の生徒の発言 「すげー」と「三流」~


 「先生どこの大学出たの?」僕が過去に勤めたA中学校の1年生の質問です。僕の返答に対する反応で、前者は加藤さん(仮名)、後者は須藤さん(仮名)という男子生徒でした。


 言い方を変えてみましょう。前者は「あなたは立派な学歴をもっていますね」となります。後者は「あなたは三流の学歴しか持っていませんね」ということですね。


 見事なほど対称的な生徒たちの反応でした。加藤さんにはともかく、須藤さんには「しまった」と思いました。 


 この後しばらくの間、学歴差別による「いじめ」を受けることになってしまったからです。


 彼は廊下で僕の顔をみるなり「三流」、「三流」とはやし立て、馬鹿にし続けました。2週間ほど続いたでしょうか。


 「そうなのかなあ」当時まだ教員経験年数が浅かった僕は、ただこう思っただけで生徒を適切に指導することもできませんでした。


 ただ幸いだったのは、彼に同調する生徒が誰もいなかったことでした。悔しい思いをしながらも、やがて自然消滅しました。 須藤さんは勉強がよくできる優秀な教え子の一人でした。


 小学校を卒業したばかりの4月。12歳です。中一の生徒から4月早々いじめられるとは思ってもいませんでした。でも冷静に考えてみると何か疑問に思えてなりません。


 この年頃の彼に大学の難易度ランキングなどわかっていたのでしょうか。「三流」という言葉は本当に彼自身からの言葉なのでしょうか。


 背後には親を始めとする大人たちの陰が見えるような気がします。ならば大人たちの代弁ですね。


 同じような質問は、その後A中学校の他の生徒からも、転勤後のB中学校でもありました。以後僕の答えは「東京の大学」にとどめることにしました。


 大切なことは過去ではなく、今現在です。目の前にいる生徒たちの前で何ができるか、何をしようとしているかということです。


 歴史上の人物で、学歴差別ではありませんが、学問そのものを権力者から差別的に扱われて攻撃された人物がいます。京都大学の教授で刑法学者の滝川幸辰(ゆきとき)です。


 1933年、彼の著書「刑法読本」が発禁処分にされ、文部省から強引に大学を休職にさせられてしまいました。


 これに抗議して、多数の教授たちが辞職し、1,300人もの学生たちも京大を退学しました。


 すさまじい抵抗で、歴史上「滝川事件」と呼ばれています。
 では、当時の文部省は著書「刑法読本」のどのような内容を問題視したのでしょうか。


1 犯罪は犯人の生活状態を改善しなければ少なくならない。刑罰によって犯罪をなくすこと
は不可能。

2 姦通罪について、妻の姦通罪だけを犯罪にし、夫の姦通を不問に付すのはよくない。

3 国家は革命家を敵として取り扱うのはよいが、道徳的に下等な人間として処置してはなら
ない。

4 犯人への報復的な刑罰を科すよりも、同情と理解をもって人道的に扱うべきだ。(4はト
ルストイの説を肯定したものです)

 文部省はこれらの内容を「共産主義的な危険思想」として断定したのです。はたして危険なのはどちらでしょうか。


 この年は国際連盟を脱退し、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、政府もつぶれてしまいました。滝川幸辰は戦後復帰して、京大の総長も務めました。


 この事件は日本の「反ファシズム運動の最後の輝き」と呼ばれています。
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