2 ネ ロ (37年 ~ 68年)





~権力濫用で国民から見放され自殺に追い込まれたローマ皇帝~





 ネロは16歳でローマ帝国の第5代皇帝になり、治世の前半は国民から人気がありました。

 税収の一本化や、通貨の改革で国の財源を確保しています。




 反ローマであったブリタニアとアルメニア・パルティアを、巧みな戦争と外交で親ローマに仕向けることにも成功しました。




 スポーツや詩や音楽などの芸術を愛し、文化国家づくりも目指していた彼は、民衆から絶大な支持を受けていたのです。




 そのネロが、史上最悪の暴君と呼ばれるようになったのはなぜでしょうか。




 まず、実の母親アグリッピナとの権力争いが、破滅への第一歩だったのではないでしょうか。

 そもそも、ネロが皇帝になったのは、アグリッピナの策謀によるものです。




 彼女は前皇帝クラウディウスの後妻で、ネロは連れ子でした。

 後継者はいましたが、巧みに排除し、自分の子を皇帝に即位させたのです。




 「皇帝にしてやったのは私だ」




 母親は息子に恩を着せ、事実上の摂政役になって権力を振るおうとしたのです。




 ネロの結婚も、他に好きな女性がいましたが、母が無理やり自分の意中の女と結婚させ、離婚問題にもうるさく口出ししました。




 ネロは激しく抵抗します。




 アグリッピナの次の手は、色仕掛けです。




 こともあろうに念入りに化粧をして、宴の席に現れ、淫らな愛撫を浴びせては息子の頭をかき乱したのです。




 アグリッピナの巧みな愛撫を受けるたびに、ついにネロはそれが実母であることも忘れて、欲望に身をまかせてしまうのでした。




 つまり権力を手に入れるために息子を誘惑し、近親相姦をしたのです。

 これはびっくり仰天、困ったお母さんですね。




 この醜聞は、さすがにローマ中に広がったので、ネロもまずいと感じたのでしょう。




 これもまたびっくりですが、ついに母親の殺害を断行しました。

「あなたたちは、親子でいったい何をやっているのですか」




 こんな国民の声が、帝国中から聞こえてきそうです。



 次に、キリスト教徒の迫害です。

 64年、ローマでは9日間燃え続けた大火災が発生しました。




 ネロはこの火事の原因をキリスト教徒の放火とし、責任をなすりつけたのです。




 捕えられたキリスト教徒たちは、生きたまま松明がわりに火あぶりにされるなど、残忍な処刑を受けています。




 とてつもない大迷惑です。

 さすがにこれは、キリスト教徒でないローマ市民からも不評でした。




 当時のキリスト教徒は少数派でしたが、その後現在に至るまでに多数派になりました。

 世界史上初めての迫害者として、その名が広く、長く知れわたることになったのです。




 その他にも、皇帝としての権力を濫用したと考えられる事例には事欠きません。

 妻と離縁して、既婚女性を強制離婚させて妻として迎え、その夫は左遷。




 恩師までも、うざったいからといって殺害しています。




 さらに、倒錯した性の所業も噂になりました。




 女装して、解放奴隷の花嫁になったり、美少年を去勢して女装させて自分の正式な妻として迎えたりもしました。




 悪口を言ったということで、最高裁判所の長官も死刑。

 元妻も死刑。




 他にも、元老院の多数が処刑されて、次から次へと殺人の嵐です。




 68年、穀物の価格が高騰しているローマで、エジプトからの穀物輸送船が、食料ではなくて宮廷格闘士用の闘技場の砂を運搬させました。




 この事実から、ネロはローマ市民からさらに大きな反感を買うことになったのです。

 ここに及んで、元老院はネロを「国家の敵」 とし、別の皇帝を擁立します。




 ついに地方からも反乱がおこり、ネロは逃亡せざるを得なくなりました。




 起こるべきして起こった反乱ですね。




 最後は解放奴隷パオラの別荘に隠れましたが、近づく騎馬兵の音が聞こえるにおよび、自らの喉を剣で貫くという自殺に追い込まれたのです。





 彼の最後の言葉は、次のように伝えられています。

 「何と惜しい芸術家が、失われることか」

 


 「この期に及んで、その言葉ですか」

 多くの国民の声ではないでしょうか。





それにしても、やりすぎです。

差別意識から解放されなかった男の末路は、悲惨な結果になりました。





 最初は一般庶民にかなり近いところにいましたが、権力は民衆のためにあるべきだ、ということを再確認させられる男の生き方ではないでしょうか。
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