1 モーセ (前13世紀頃)




~ユダヤ民族を奴隷から解放した預言者~




 モーセはキリスト教やユダヤ教、イスラム教からも大預言者として大切にされている人物です。

 ユダヤ人の子としてエジプトで生まれました。



 当時ユダヤ人は弾圧の対象になっていて、民族の苦難の時代でした。

 エジプト国王は 「ユダヤ人の男児は出生と同時にナイル川に投げ込め」 という命令を下していたのです。



 明らかな民族差別ですね。



 このエジプト国王は、ラムセス2世といわれています。


 古代エジプト最強の国王として知られ、アブシンベル神殿をはじめ、数々の巨大な遺跡を現在に残した人物としても有名です。



この命令により、モーセは生まれたときに殺される運命にありました。



 人間を人間とも思わない 「人権侵害」 は、古代からこんな形で世界のあちこちで存在していたのですね。


 しかし幸運なことに、死ぬ運命にあったモーセは、置き去りにされたナイル川の岸辺から拾い上げられて、からくも生きのびることができたのです。



 彼を助けたのは、何とラムセス2世の王女だったのです。

その後、王女の養子として成長することができました。



 ところが、ある日とんでもないことがおこります。

 モーセは殺人を犯してしまったのです。



 ユダヤ人の同胞を訪ねようとしたとき、彼らに対する奴隷監督の残忍なふるまいを、見るに見かねたのでしょう。

 エジプト人を打ち殺してしまったのです。



 殺人罪で追われる身となったモーセは、アラビア半島のミディアンという地方に逃れました。

 そこでその地の女性と結婚して、羊飼いになりました。



 ラムセス2世の死後、モーセは羊の群れを追って神の山ホレブに来たとき、ヤハウェの神の声を聞き、自分の使命を悟ったといいます。



 エジプトにもどって次の国王のもとへ行き、ユダヤ人の解放を訴えました。



 この国王はラムセス3世と考えられています。

 国王にとっては、ユダヤ人の奴隷は財産であったので、この訴えを受け入れずに黙殺しました。



 しかし、その後国中にさまざまな災いがおきたので、ユダヤ人の解放を許可したのでした。

 彼らは急いで財産をまとめ、エジプトを後にしました。



 これが旧約聖書に書かれている 「出エジプト」 というできごとです。

 エジプトを脱出した一行は、現在のイスラエルのあたりであるカナンというところをめざして進みはじめました。



 ところが、その間に国王は気が変わり、軍勢が一行を追ってきたのです。

 「葦の海」(あしのうみ) と呼ばれる海の手前で追いつかれそうになり、ユダヤ人一行は絶体絶命のピンチになりました。



 一難去ってまた一難です。

 やっとつかみかけた自由への道です。



 断じて譲るわけにはいきませんね。

 そのとき海が2つに割れ、一本の道が現れたのです。



 一行はこの道をたどって対岸へ逃れることができました。

 一方追いかけてきたエジプト王の軍勢は、海に沈んでのみ込まれてしまったのです。



 こうしてエジプト脱出に成功した一行は、飢えや渇きと闘い、シナイ半島の王たちとも戦いながら40年にもわたって荒野を放浪し、ようやくカナンを望む地に至ったといいます。



 高齢のモーセはカナンに入ることはできず、指揮権をヨシュアにゆだねて亡くなりました。



 ここで考えられることとして、差別者はエジプト国王であるラムセス2世、3世であることは明白です。

 民族差別を受けたのはモーセをはじめとするユダヤ民族です。



 モーセは人間としての自由を求めて立ち上がり、その生涯を捧げました。



 奴隷を解放した勇気ある行動力と生き方に共感を覚えるのは僕だけでしょうか。



 宗教的なことはともかくとして、自由のために差別と闘った、世界史上特筆されるべき人物だと思います。
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はじめに


第1章紀元前の世界

1 モーセ        ~ユダヤ民族を奴隷から解放した預言者~

2 シャカ        ~人間の平等を説き苦しみを乗り越えたインドの王子~

3 陳 勝        ~中国史上初の身分差別に立ち向かった農民~

4 グラックス兄弟    ~貧しい人たちのために土地改革で命をかけた古代ローマの兄弟~

5 司馬遷        ~時の支配者にこびず人間を大切にした中国歴史の父~

6 スパルタクス     ~自由のために命をかけて戦った古代ローマの奴隷~


第2章古 代(1~4世紀)

1 イエス        ~愛と平等に生き民族差別を解放したユダヤ人~

2 ペテロ        ~外国人差別を解放した初代ローマ教皇~

3 張 角        ~平等な中国を目ざして立ち上がった農民の指導者~


第3章中 世(5~15世紀)

1 陶淵明        ~桃源郷の夢を追い続け自由に生きた田園詩人~

2 ムハンマド      ~部族間の差別をなくし本質的平等に生きたアラビアの商人~

3 玄 奘        ~皇帝からの差別を乗り越え一途に生きた唐の天才~

4 宗 江        ~腐敗しきった権力に立ち向かった水滸伝の英雄~




第4章近 世(16~18世紀)

1 ルター         ~信仰の自由のために権力と闘ったドイツの大学教授~

2 ガリレイ        ~学問の自由のために権力と闘ったイタリアの物理学者~

3 李自成         ~田畑の平等分配を目ざした明の農民~

4 クリスティーナ女王  ~王位を放棄して自由に生きたスウェーデンの才女~

5 ロック          ~名誉革命に理論的根拠を与えたイギリスの思想家~

6 モンテスキュー    ~権力分散で自由を目ざしたフランスの社会学の父~

7 フランクリン  ~自由と独立のためにルイ15世を動かしたアメリカの科学者~

8 ルソー         ~人民主権を主張したフランスの思想家~

9 ワシントン       ~自由と独立に命をかけたアメリカ建国の父~

10 プガチョフ    ~農奴解放のためにエカチェリーナ2世に立ち向かった軍人~

11 ジェファソン      ~植民地解放のために戦ったアメリカ独立宣言の起草者~

12 コシューシコ     ~自由のためにヨーロッパの強国と戦ったポーランド独立運動の父~

13 シエイエス      ~身分差別を乗り越えて国民議会を作ったフランスの僧侶~

14 ラファイエット ~身分差別を乗り越えて人権宣言を起草したフランスの貴族~


第5章19世紀の百年間

1 ベートーヴェン    ~王侯貴族の特権である音楽を一般民衆に広げたドイツの大作曲家~

2 ロバート・オーウェン  ~貧富の差のない平等な社会をめざしたイギリスの工場主~

3 シモン・ボリバル    ~植民地の解放に命をかけたベネズエラの白人~

4 バイロン       ~ギリシア独立戦争にかけつけた恋多きイギリスの詩人~

5 ドラクロア      ~民衆の立場から七月革命を世界に広げたフランスの画家~

6 ウィリアム・ガリソン ~ペンによる三十年戦争で奴隷解放をめざしたアメリカのジャーナリスト~

7 JSミル        ~女性の解放をとなえたイギリスの男性哲学者~

8 ストウ夫人      ~物語を通して人種差別と闘ったアメリカの主婦~

9 洪秀全        ~民族差別からの解放に立ちあがった中国の農民~

10 マルクス    ~労働者の立場に立ち国境を越えて人々を大切にしたドイツの経済学者~

11 ナイチンゲール ~職業差別を乗り越えて看護にかけたイギリスの貴婦人~

12 ジェロニモ       ~開拓という名の侵略と戦い続けたアメリカの先住民~

13 ジェームス・カントリー ~民族を超えて中国の革命運動を支えたイギリスの医師~

14 アニー・サリバン ~障がい者差別を乗り越えて三重苦の少女に生涯をかけたアメリカの教師~

第6章20世紀以後の世界

1 孫 文        ~民衆のための新しい国づくりに命をかけた中国革命の父~

2 ガンジー    ~人種差別に対して非暴力と不服従で闘い続けたインド独立の父~

3 安重根        ~日本の侵略から祖国を守ることに命をかけた韓国の義兵~

4 陳独秀        ~民主主義を広め古い制度と闘った中国の思想家~

5 アインシュタイン ~民族差別を乗り越えて平和のために闘ったドイツの物理学者~

6 魯 迅        ~ペンで革命運動にかけた中国近代文学の父~

7 ピカソ      ~ファシズムから自由を守るために立ち上がったスペインの画家~

8 ネルー        ~カーストの身分差別廃止と世界の平和共存をめざしたインドの初代首相~

9 チャップリン     ~映画を通してファシズムと闘ったイギリスの喜劇王~

10 エドワード8世    ~身分差別を乗り越えて結婚の自由のために王位を捨てたイギリス国王~

11 周恩来        ~侵略からの自由と平和をめざして戦った中国の首相~

12 ジャヤワルダナ  ~外国人差別を乗り越えて生きた日本独立回復の父~

13 マンデラ     ~人種差別の獄中生活に耐えぬいた南アフリカ初の黒人大統領~

14 キング牧師   ~人種の壁を越えて自由と平等をめざす公民権運動にかけたアメリカの黒人牧師~

15 アウン・サン・スーチー   ~軍事独裁と軟禁に耐え民主化運動を続けるミャンマのー女史~

16 劉 暁波    ~自由と平等のために獄中で権力と闘い続ける中国の人権活動家~



おわりに








<訪問者の皆様へ>

  僕の記事にアクセスしていただき、誠にありがとうございます。

 第1集「自由と平等にかけた人々」(世界史編)における、僕が考えた歴史上の人物は、上記の57人です。

  来週から一人ずつ、57週間かけて人物エッセイを発行します。

  読んでいただけたらとても嬉しいです。



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はじめに



 このブログは世界史の人物エッセイ集です。



 ただし、今までの世界史とは視点がちがいます。

 上から目線ではなく、一般民衆の立場から、自由・平等を中心とする基本的人権の獲得を中心テーマにしました。



 僕は、このような歴史のとらえ方を 「人権史観」 と呼んでいます。

 僕たちが今まで学んできた歴史とは、いったい何だったのでしょうか。



 誰のための歴史だったのか、ということを考えると、疑問に思えてくることがあるのです。

 それは、 「どの視点から歴史を見ているか」 ということです。



 学校の教科書をはじめ、数多くの歴史書では支配者、権力者の立場から歴史上の出来事を他人事として見ていなかったでしょうか。



 一般庶民の立場から見て、自分たちのこととして歴史を考えれば、使用する語句や文章はおのずと変わってくるでしょう。



 たとえば「反乱」という言葉があります。



 これは支配者の立場からの言葉であり、一般庶民の目から見れば 「独立戦争」 であり 「自由のための戦い」 であり 「解放運動」 であるわけです。



 具体例をあげると、1957年にインドでおきた世界史上有名な大事件は 「インドの大反乱」 とか 「セポイの反乱」 とよばれています。



 しかし、これはイギリス側から見た言葉で、インドの側から見れば 「インド独立戦争」 であり 「インド解放運動」 となるでしょう。



 結果はイギリスが勝って、インドを植民地にして支配することになったことはよく知られている事実です。

 長い世界の歴史をよく見ると、それは支配と差別の歴史である、といっても過言でないくらいです。



 統一という名のもとの人権侵害をしてきた人物が大きく取り上げられ、自由と反差別のために闘った人たちがあまり大きく取り上げられていない、と感じているのは僕だけでしょうか。



 この支配から解放された状態が 「自由」 です。

 自由とは自分の思い通りに行動できることで、一人一人が幸せになるためには不可欠です。



 このことは誰もが認めるところでしょう。



 しかし、現実には家族や周囲の人間関係、自分の住む地域や職場、さらに国や世界といったレベルまで、数々の支配が個人の自由を束縛しているのです。



 自分の内側から生じる支配もありますね。

 知らず知らずのうちに、自分自身で自分の自由を奪っていることがありませんか。



 世界史をひも解くと、世界のどの地方、どの文化にも奴隷制というシステムがあり、また身分があり差別がありました。



 「差別」 は長い間、支配者の支配のための道具として使われてきました。

 そして今も世の中の至る所で使われています。



 このことに気づいていない人は意外と多いのではないでしょうか。



 また、気づいていても、その差別と支配からなかなか抜け出せずに苦しみ、自分の生き方に疑問を持っていらっしゃる方の数は計り知れないと思います。



 僕自身も、数年前までまさにこのような状態でした。

 差別したり差別されたりという経験は、人間なら誰にでもあると思います。



 僕がこのエッセイを書く目的は、世界史を見る視点を変えることによって、自由で心豊かに生き、差別意識から解放される人を一人でも増やすことにあります。



 学校の授業や、多くの歴史書ではなかなか気づかなかった 「人権史観」 を世界に広く伝えていくことをめざして執筆します。



 そのためには、自由と平等をこよなく愛し、権力や差別と闘った先駆者たちに光を当てることから始めたいと思います。



 これまでの自分の生き方に自分で気づき、その生き方を変えて、幸せになれる人が一人でも多く増えるように願っています。




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